伝統の重み

著者:株式会社ミラック光学 代表取締役

対抗戦第100回記念試合の「伝統の明早戦」が、12月1日(日)に国立競技場で4万人を超える大観衆の中で開催されました。

どちらかが有利という下馬評がある時ほど逆の結果になったり、国立競技場には魔物がいると言われ、想定外のミスやチャンスが生まれたり、「魂の決闘」にふさわしい数々の激闘、劇的な結末が幾多の名勝負として伝統の一戦から生まれました。

私は大学1年生(18歳)の時に“伝説の雪の明早戦”をスタンド観戦し、スクラムから湯気があがる猛烈な死闘の中、後半ロスタイムに同点のペナルティキックを狙わず、最後の最後まで信念を貫いた明治のラグビー(スポーツを超えた生き様)に感動して恋に落ちて以来、37年間にわたって明早戦をすべてスタンド観戦してきました。
毎年暮れになって翌年のカレンダーや手帳を購入すると、まず最初に12月第一日曜日に“明早戦”と記入し、一年の予定がそこから決まり始めます。
若かりし頃の新婚旅行の日程も、今は仕事の出張予定も、“明早戦”が最優先で他の日程はずらします。“明早戦”は、私にとって人生の宝物だからです。

明治が黄金時代と言われた時期も、その後の長い長い大低迷期も、良い時も悪い時も毎年国立競技場に足を運んで明治大学を応援してきました。
これは習慣などという簡単なものではなく、18歳の時に受けたあの衝撃から“私の人生の道標”となり、毎年自分が原点に返り「“前へ”の気持ちを忘れていないか、諦めずに挑戦しようとしているか」を、試合を見ながら振り返る場所なのかもしれません。

今年の第100回目も、明早戦らしい素晴らしい試合でした。
明治大学の故北島忠治監督は、試合前に「早稲田に勝て」とは言わなかったと聞きます。
必ず明早戦に送り出す選手たちにかける言葉は「良い試合をしろ」の一言。
早稲田大学さんに敬意をもって戦えという教えも含め、すべてシンプルでありながら何かが凝縮されているのが北島語録なのかもしれません。

対抗戦は残念ながら3位となった明治大学ラグビー部、ここからが本当の勝負の大学選手権(トーナメント)は、極めて厳しいカードが続く山に入りました。
東海大を倒し、関西王者の天理大を倒し、年越ししてダブルスコアに近い屈辱的敗戦を喫した帝京大に何が何でもリベンジし、決勝でもう一度早稲田大学さんと雌雄を決する“決闘”をしてもらいたいと願っています。明治には、”下剋上”が似合う。

明治にとって屈辱的なスクラムを押される展開があったとしても、こだわり過ぎずに戦略を変えても、今の明治大学ならば対応できる。
ノックアウト方式の大学選手権では、1点差でも良いから勝たなければ終わる。
今年の明治には、たくさんの“強み”がある。
“明治の矜持”は忘れることなく、しかし試合運びはしたたかに、勝つための戦略に期待しています。
明治大学ラグビー部に、武運あれ!!