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検査顕微鏡と接眼ミクロメーターによるピン先端角度検査の精度改善
金属切削メーカーにおける、ワークの旋盤加工後の検査工程での作業改善事例です。
課題: 顕微鏡と検査ゲージによる検査で、OK/NGの判定に迷ってしまいます。
旋盤で加工されたピンの先端角度を検査しています。
ワーク(ピン)を加工後に旋盤から取り外して置台に載せ、検査ゲージをあてがってピンの先端位置を顕微鏡で確認しています。
ピンの角度が大き過ぎると先端位置は検査ゲージの所定の位置まで届かず、反対にピンの角度が小さすぎるとオーバーしますので、ピン先が正しく所定の位置に収まるかどうかを基準に判定する方法です。
ピン先端付近は顕微鏡で拡大してチェックいていますが、OKかNGかの判定に迷ってしまうものも多く、そのため検査精度も不安定です。
また、この検査ゲージを使っての作業方法では、ワークや検査ゲージのハンドリングのために両手を使う必要があり、なおかつそれらを顕微鏡を覗かなければならないため、作業がしづらく効率が悪いことも大きな課題でした。
解決! ミクロメーター装着の顕微鏡を使用、検査精度・作業性を大幅に改善!
検査ゲージを使用した検査方法そのものを取りやめ、接眼ミクロメーターを装着した顕微鏡で検査する方法に変更しました。
ワークであるピンの正確な先端角度を接眼ミクロメーターに基準線として刻み(特注品としてミラック光学にて制作、顕微鏡にセットして納品)、直接ピンの先端角度が基準線にマッチするかチェックすることで、より正確で迷いのない検査ができるようになりました。
また、顕微鏡をマグネットスタンドに固定し、マグネットスタンドごと旋盤にセッティグできるようにしました。これにより、ワークを旋盤から取り外す必要がなくなりました。
検査方法の変更でワーク置台や検査ゲージが不要になり、両手を使わずに検査できるようになるのと同時に、ワークの取外しという工程も省くことができたため、作業性も大幅に改善しました。
検査顕微鏡「メジャースコープ(M-45)」の特徴
- レンズ系は明るく実視野が広い、完全正立像式の顕微鏡です。
- 多彩なレンズ系と接眼ミクロメーターとのアレンジで、非接触の測定顕微鏡として使用できます。
- 接眼ミクロメーターを交換するだけで、各種測定・検査・芯出し・位置決めなどさまざまな用途への対応が可能です。
- お客様の仕様に合わせた特注ミクロメーターの製作も可能です。(特注ミクロメーター受注実績1000種類以上)
- 付属品(10倍接眼レンズ・2倍対物レンズ)
応用のポイント:ミクロメータの最小1目盛の読みについて
接眼ミクロメータの目盛の読みは、実際に刻まれている最小1目盛を使用する対物レンズの倍率で割ると算出できます。例えば、接眼ミクロメーターのスケールが、10㎜100等分(最小1目盛0.1㎜)では、以下のようになります。
・対物レンズ 2倍使用時 0.1÷ 2=0.05mm(最小1目盛の読み)
・対物レンズ 5倍使用時 0.1÷ 5=0.02mm(最小1目盛の読み)
・対物レンズ10倍使用時 0.1÷10=0.01mm(最小1目盛の読み)
特注ミクロメーターの製作のご依頼で、「1目盛の読みをもっと細かくしたい」とのご要望をよくいただきますが、上記のように使用する対物レンズ(倍率)を交換することで対応できてしまうケースもあります。
その場合、ミクロメーターを特注で作製しなくても済んでしまうか、特注するにしても刻み込む目盛などの情報量を少なくできることもあります。詳しくはどうぞお気軽にご相談ください。
回転ステージとX軸ステージを使用した先端形状検査治具
金属加工メーカーでの切削品の外観検査治具を、X軸ステージと回転ステージを組み合わせることで改善した事例です。
課題: ワークを都度、手で抜き差しし反転、穴の両側を検査。片側の検査漏れや抜き差しによるワークの変形が問題です。
シャフトの先端にある穴形状の検査をしています。検査はマイクロスコープの画像を観察する方法で行います。マイクロスコープの位置は、マイクロスコープの下にあるX軸ステージで合わせています。
ひとつのワークについて、穴の入口と出口の2ヶ所を検査するため、その都度ワークを外して180°反転させる必要があります。このワークの抜き差しの作業ミス(作業抜け)が問題になっています。
長時間作業していると、作業者が「これからワークのどちら側を検査するのか? また、どちら側を検査し終えたのか?」が分からなくなってしまい、穴の片側の検査が漏れてしまうことがあるのです。
また、作業者が手で抜き差しする作業は、面倒で時間もかかります。その上、「その抜き差しの作業によってワークが変形してしまう」という品質面の問題もあり、最終的な部品品質の低下も課題となっていました。
解決! 回転ステージの採用で検査漏れが無くなり、作業性も改善。品質の問題も解消できました。
マイクロスコープを据付けたX軸ステージの下に台座を組み、回転ステージに取り付けました。
回転ステージ上のマイクロスコープが、ワークの外周を180°スムーズに回転、穴の両側を簡単に検査できます。ワークを抜き差しして向きを反転させる作業は不要になりました。
回転角度(180°)は、回転ステージのストッパーで予め固定されているので、作業者は終端までステージを回転させるだけでOK。回転角度を気にすることなく、確実な位置で検査ができます。
穴の片側の検査漏れの問題は、回転ステージ上のマイクロスコープの位置(手前か、奥か)によって検査している側面が一目瞭然になったことと、ワークの両側を続けざまに検査できるようになったことで、発生しなくなりました。
また、ワークを反転させるために抜き差しする必要がなくなった分、抜き差し作業でワークが変形してしまう品質の問題も減少しました。さらに、ワークを抜き差しする手間と時間より、マイクロスコープを回転ステージで180°反転させる時間の方が短く簡単なため、作業時間も短縮でき、生産効率も向上させることができました。
回転ステージ (KTS-60) の特徴
- 手動でしっとりなめらかに360°回転するステージです。耐荷重は 68.6N(7kgf) です。
- ステージ面 : φ60mm (ステージ面サイズ φ40mm の KTS-40 もあります。)
- 偏芯量 : 0.05mm
- 材質 : アルミ合金
- 表面処理 : 梨地黒アルマイト
- 自重 : 0.2 kg
- 付属品 : M4 (8mm) 六角穴付きボルト 4本
応用のポイント:センサー・カメラ・ワーク等の向きを変えたい時に最適です。
回転ステージ固定側に目盛(最小読取り1°)が刻んであるので、おおまかな回転角度の確認が可能です。( ステージ面サイズφ40mmのKTS-40 は最小読取り2°)
また、使用用途に応じて標準装備のストッパーをご利用ください。回転ステージ回転部をお好みの位置で固定することができます。
検査顕微鏡(接眼ミクロメーター内蔵)を使用した画鋲のピン形状検査
文房具の製造メーカにおける出荷前検査工程での設備改善事例です。
課題 : 画鋲(ピン)の傾きや先端形状の判定が難しくて困っています。
画鋲のピンが傾いていないか?や先端(とがり具合)の形状検査をしています。拡大鏡を使って検査していますが、ピンの傾きについては判定に迷うものも多く困っています。そのため、検査員相互の確認でOK品の中にNGのものが、NG品の中にOKのものが混入している状況で、品質のバラツキが課題となっていました。さらに、検査員間での検査数量にも大きな差が生じていました。
解決! 検査顕微鏡(接眼ミクロメーター)の使用で判定基準が明確に!
検査に顕微鏡を使用することにしました。ピン先端のとがり具合がより鮮明に見えるようになりました。ピンの傾きも顕微鏡に内蔵された接眼ミクロメーターの十字線を活用することにより判定がしやすくなりました。検査の判定基準が明確になったことで、検査員間による判定結果のバラツキも少なくなり出荷品質も向上しました。また、判定に迷って上がらなかった検査員の検査数量もアップしました。
顕微鏡 (M-45) の特徴
- レンズ系は明るく実視野が広い完全正立像式の顕微鏡です。
- 顕微鏡光学系のみのユニットです。摺動ホルダーとのさまざまな組み合わせができ、専用スタンド類とのシステム構成により利便性やバリエーションがさらに広がります。
- 工業用に最適な長作動距離・同焦点(対物レンズ 2X~10X)に設計されています。
- スライダーが標準付属されている顕微鏡ユニット(MS-45)もあります。
接眼ミクロメーター (31-C) の特徴
接眼ミクロメーターとは:
顕微鏡を使用した観察時に対象物の大きさを計測するのに用いる器具がミクロメーターです。接眼ミクロメーターは、接眼レンズユニットに組み込んで使用します。測定だけでなく、検査・芯出し・位置決めなどの幅広いニーズに対応することができます。
- 目盛線 : 十字線のみ( お客様の仕様に基づいた特注品の作製も可能です。)
- ガラス計 : φ24 mm
- 板厚 : 1 mm
- 材質 : 青板ガラス
- 蒸着 : 上面
応用のポイント:摺動ホルダーで、X・Y・Z 思い通りに滑らかに動作します。
鏡筒光学系(顕微鏡本体)に一軸・二軸・三軸の摺動機能を付加できる摺動ホルダーを使用すれば、ピント合わせや顕微鏡のX・Y・Zへの移動を敏速に行うことができます。
当社ミラック光学製のアリ溝摺り合わせ式ラック&ピニオン機構による滑らかな動きの各種スラーダーや、各種スタンド類と組み合わせてみてはいかがでしょうか。